神戸港内公有水面埋め立てについての環境庁長官意見(全文)

(1999年6月22日環境庁公表)
 本埋め立て計画は、厳に埋め立てを抑制すべきとされている瀬戸内海海域で実施される計画であるが、阪神淡路大震災の復興事業の核として位置づけられるものであること等を考慮し、環境庁として瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく埋め立て基本方針を踏まえて意見を述べるものである。
 計画の実施にあたっては、環境保全に万全を期するため、下記の措置を講じる必要がある。

1 本事業が予定されている大阪湾では、現状においても水質の環境基準が達成されておらず、富栄養化の進行した海域である上、本件のほかにも、大規模な埋め立てが実施または計画されていることを踏まえ大阪湾の水質保全の観点から以下の措置を講じる必要がある。
(1) 下水道の高度処理の導入と汚濁負荷量削減の目標の達成をはじめとする「水環境の保全・創造計画」の着実な実施を図ること。特に、東灘処理場および垂水処理場において、2010年までに高度処理を導入するよう、取りはからうこと。
(2) 空港島からの排水は計画通り全量埋め立て地外の公共下水道で高度処理すること。
(3) 埋め立て工事中の水質汚濁防止について十分配慮するとともに、工事中の濁水処理について所要の対策を講じること。
(4) 工事中および埋め立て地供用後における海域環境監視を計画的に実施し、工事途中段階および埋め立て地供用後に環境監視結果を勘案の上、今回実施された環境影響評価の予測結果についてレビューを行い、その結果を踏まえ埋め立て工事の工程等の変更を含め環境保全上必要な措置を講じること。
 また、緩急傾斜石積護岸や人工ラグーンなど環境改善事業の水質浄化機能や生物生息空間創出の効果について調査・研究を神戸港の海域環境改善に反映すること。
2 埋め立て用材として一般建設残土やしゅんせつ土砂が今後さらに確保された場合には、これらの受け入れを図り、既存処分地の延命化や今後の土砂埋め立ての抑制に資する必要がある。また、代替材の活用等の海砂使用量の低減に積極的に取り組む必要がある。

3 航空機騒音については、供用開始後直ちに環境基準を達成し、かつ、将来とも維持されるよう施設の運用を行う必要がある。このため関係機関に対し、低騒音型の機材の導入、騒音を低減する運行方法の採用並びに飛行経路の順守を要請する必要がある。
 また、今後、環境影響評価の前提となった飛行経路、便数等に変更があり、陸域において環境基準の達成が困難になるおそれがある場合には、環境への影響を改めて予測・評価し、所要の措置を講ずる必要がある。

4 背後市街地域においては、国道43号線沿道をはじめとして二酸化窒素濃度および道路交通騒音にかかわる環境基準が達成されていないことから、関係機関と協力しつつ、下記の措置等を講じることにより大気・騒音にかかわる環境負荷を低減する必要がある。

(1) 空港管理用車両については、低公害車とするようその導入を図ること。リムジンバスおよび航空貨物取扱自動車等関連車両についても、これと同様に低公害車を導入するよう事業所等に対し要請すること。また、空港用地内において天然ガス充てん施設および電気自動車充電施設の設置を推進するとともに、利用者駐車場において低公害車優遇措置を講ずること。
(2) 沿道環境予測の前提とした阪神高速湾岸線等の道路および新交通システムについて、環境保全に十分配慮しつつ整備を進めるよう要請するとともに、予測の前提となる交通網が整備されない場合には、関連車両の公共交通機関へのシフト等により、さらなる負荷軽減策を講じること。
(3) 航空機から排出される大気汚染物質の低減に努めるよう要請すること。
5 工事中および供用後の環境監視については一般環境大気および沿道大気環境の常時監視並びに交通量自動測定を実施し、航空機騒音、飛行経路、大気汚染、道路交通騒音、交通量等に関し、背後市街地への環境影響を考慮しつつ適宜調査地点および回数を追加するとともに、監視結果を適切に公表すること。
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