第2号コラム〜金融ビッグバンを前に知っておきたい!!震災でわかった悪質損保会社

1997年6月15日
いきなりですが、ここで質問です。

 あなたの家は1年前、大災害で全壊しました。火災保険金は免責され支払われていません。
 しかし、今日、あなた宛に、全壊した家に掛けていた火災保険料が「1年分未払い」という督促状が届きました。

 あなたはどうしますか?

 もちろん、保険会社に説明して、解約の手続きをとりますよね。ところがです。

それから3か月後。
 解約したにもかかわらず、同じような督促状が届き、おまけに「追徴金」まで支払えと書かれていました。さらに「告訴する」と念を押す手紙が届きました。

 こんなことが現実にあると思いますか?

 支払う根拠もなく、保険の対象となる家もない期間の保険料を請求された上、おまけに、震災では「地震免責」で保険金は出ていない…  民事介入暴力のヤクザの脅迫状まがいの督促を繰り返した、上記のような例が、実際に神戸市でありました。

 神戸市中央区で自宅を全壊した被災者が、この悪質保険会社「大東京火災」に対し、根拠のない督促状で精神的苦痛を強いられたと、このほど民事訴訟を起こしました。
 訴えられた「大東京火災」は「単なる事務的なミス」としているものの、大震災で自宅を失った人に、さらに、その家に対する大地震以後1年間以上の保険金を支払え…とは単純ミスでは済まされず、仮に単純ミスであったとしても、この「大東京火災」の事務能力は、極めてずさんであるとしか言えません。 (東京では、これは当たり前のことなのでしょうか?)

 来年4月、日本では金融の自由化、すなわち「金融ビッグバン」が始まります。銀行や証券会社ばかりがクローズアップされていますが、生命保険や損害保険も、その対象です。会社側の姿勢も問われますが、私たち「利用者」「契約者」側も、金融機関、保険会社について、責任を持って、いろいろと知っておかなければならない時代が訪れるのです。つまり、金融機関や保険会社が破綻しても 預金や保険金が支払われなくても、文句は言えなくなるのです。

 こういう時代だからこそ、大震災で露呈した悪質な会社にひっかからないためにも、金融機関や保険会社が被災地でどんなことをしたのかも「資産の危機管理」の一つとして知っておくべきでしょう。

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1997年6月15日
(1)火災保険〜同じ保険でも、個人と大企業で応対が違う。
 今回の大震災では「生命保険」は支払われましたが「損害保険」は地震特約をつけていなかった被災者には、支払われませんでした。当然のことです。
 ところが、個人には、地震発生から3日後に発生した火災でも「地震に関連する」という難癖をつけて、火災保険の支払いに応じなかったにも関わらず、 某大企業の倉庫が、ほぼ同じ状況で火災に遭い「地震特約」もしていないのに保険金が支払われるなど、個人と大企業で不公平な対応が目立ちました。 (この事例は前出の「大東京火災」だけではなく、すべての損害保険会社に当てはまる)

(2)阪神・淡路大震災で崩壊したビルの多くが「生命保険会社」管理のビル!!
 意外に知られていないことですが、阪神・淡路大震災で崩壊したオフィスビルの多くは、生命保険会社が管理しているビルでした。
 つまり、阪神・淡路大震災以前に建てられた「生命保険会社」管理のビルは危険だということです。
 それどころか保険会社が、こういったビルを管理しているということは、皆様から集めた保険金でテナントビルを運用しているわけですから、こういった保険会社と契約するのも、ちょっと考える必要があります。
 特に「金融ビッグバン」以降、あなたの近所の生保管理物件の耐震性も判断材料の一つになるでしょう。(わ)

(3)被災地「地震特約」事情
 これは、以前からお世話になっている某火災保険会社の外交の人のお話…
「この前の地震で地震特約が増えるかと思ったんですが、だめですね。テレビなんかで、この大地震は800年に一度とか、1000年に一度しかないって 言うものだから、誰も入ってくれないですよ」
 そういえば、同じ理由で地震特約を断ったなぁ。
 ただし、必ずしも、そういう理由ばかりではないようで、いざというときに役に立たない火災保険の実態と、地震特約をつけると保険料が高くなり、 負担も大きくなるという理由もあるといいます。

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