第5号コラム〜あなたの知らない仮設住宅の世界

1998年1月1日
 命は助かっても、震災により家をなくただけではなく、まだ働けるのに職を失った人が多くいます。
 特に現在、仮設住宅に残されている人に至っては、その人たちの割合が多くなっています。
 仮設住宅居住者に対して「就職差別」があるのも事実なのです。
 全壊した家にローンが残っていたりすると最悪です。家はなくてもローンだけは毎月差し引かれます。職を失うと収入も絶たれます。
 貯金を食いつぶすしかありません。しかも家を建て直すには、さらに資金が必要です。
 善意で寄せられた義援金にしろ、仮設住宅にいる限り支払われない義援金もあります。個人差もありますが仮設住宅居住者には平均30万円程度の義援金しか支払われていないのです。
 (恒久住宅移転後に支払われる義援金は30万円。しかし、仮設住宅にいる限り、この額はもらえません)
 これを「甘え」という人もいるかも知れませんが、3年を過ぎた今、資金繰りは最悪のものとなりつつあります。貯金が底をつくと必然的に食生活は質素になります。また病気にかかりやすくなり、医者にかかれば医療費3割負担(無職者は国民健康保険に加入)。震災1年目までなら、負担は軽減されていたのですが、3年ともなると、一般と同じ扱いになります。一時は「水戸黄門の印籠」とも言われた罹災証明も屁の突っ張りにもなりません。
 もし、あなたが、仮設住宅居住者から、こんな相談を持ちかけられたら、どう答えるでしょう。
「生活保護がある」と考える人もいるでしょう。何しろ地元選出の創価学会系国会議員も、仮設住宅居住者の前で「生活保護を受けなさい」と答えたのですから。
 でも、仮設住宅にいる限り「生活保護」は受けられないのです。法解釈上、仮設住宅居住者は「住所不定者」と同じ扱いになるのです。

 仮設住宅での「孤独死」は3年間で約190人。この中には、年金生活者も含まれていますし、働ける世代の人もいます。

 あなたが将来、大災害に遭い、家も職も失って、仮設住宅に住むようになったとしたら、3年間生きながらえることは出来ますか?

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