第15号コラム〜神戸市長リコール運動の問題点

1999年9月14日
 9月13日、神戸空港着工の記者会見で笹山幸俊神戸市長は、今後の情報公開について「市民に難しいことを言っても、わからないだろう」という主旨の発言をしたらしい。
 この発言は、市は「市民に空港に関する情報公開を積極的に行わない」ともとれる。これが事実であるなら、市民を馬鹿にしており、もはや笹山氏は市民の代表とは言えない。
 3年前、神戸空港問題が争点となった市長選挙で、空港反対派候補が市街地選挙区で現市長に肉薄。東灘区と灘区では現市長の得票を上回る大接戦を演じたが、あと一歩及ばず落選した。
 2度も提案された住民投票条例案推進派議員の数の力で否決された。神戸空港を考え直すためには神戸市長の首を付け替えるだけである。しかし次の市長選は2001年秋…  こうなると、空港建設強行に対抗する最後の手段は「市長リコール」しかない。
 リコール請求をするためには有権者の3分の1の署名を1か月以内に集めなければならず、神戸市の場合、約40万人の有効署名を必要とする。これは昨年の住民投票条例直接請求署名より10万人多い数となる。
 リコールを求める市民団体は、今年の秋にも署名運動を開始したいとしているが、果たして、市長リコールは実現するのだろうか…。

 昨年、直接請求署名を行った市民団体の内部には市長リコールに難色を示している人たちがいる。このことは、すでに今年の市会議員選挙での足並みの乱れとして、すでに表面化している。
 また直接請求署名運動で大きな役割を果たした共産党を中心とするグループは市長リコール運動に参加しないことを表明。さらに、これにもまして、リコールの主人公である市民の間でも空港問題に対する、あきらめムードが加速度的に広がり、リコール運動の環境は、昨年の直接請求書名運動よりも、かなり厳しい。

 さらにリコール運動を進めるに当たって、笹山市長に対抗する「市長候補者」を明確にする必要がある。1997年の市長選挙では共産党が担ぎ出した候補者に市民団体や、今回のリコール運動を推進している新社会党が相乗りしていたことから、新社会党やリコールに賛同する市民団体から、笹山市長の強力な対抗馬となる人材が今のところ見あたらず、リコールが成立したとしても笹山市長の首を取り替えるのは難しいのである。

 一連のムーブメントを一過性のブームに終わらせないためにも、市民のカリスマ的存在になれる強力な市長候補を明確にすることと、市当局が出し渋っている空港情報に対抗し、これまで市民団体が有識者を招いた学習会などで蓄積した知識と資料を公表して、神戸空港の問題点を改めて市民に提示し、市民に再び喚起を促す必要があるだろう。

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