まず、本論は次回の「斜説」で取り上げるとして、今回は「神戸空港」とは何なのかを解説したい。
　この神戸空港計画。もともと「関西国際空港」の予定地として、国家プロジェクトの一つとして進められた。しかし、当時の宮崎辰雄神戸市長は、この計画に反対したため、関西国際空港は泉州沖に建設された。
　ところが反対したはずの市長が、なぜか「国内線専用空港」として、同じ場所に空港を造ろうと口走り始めたのだ。
　この市長は引退し、当時助役だった笹山氏が市長になっても、その火種はくすぶり続けていた。
　なぜなら、前市長といい、現在の市長といい、自民党から共産党までが支持、推薦していたため、市長の考えは、誰も反対もせずに通る可能性を秘めていたのだ。
　まさに戦時中の「大政翼賛会」が神戸で生き延びていたと言ってもよい。共産党ですら当時は、この計画に賛成していたのだから……

　そこに「大震災」が神戸市を襲う。神戸市の開発行政が悉く、大自然から否定されたにも関わらず「復興」の旗印の下、地元出身でもなく、縁もゆかりもない亀井静香氏と商工会議所、そして市長らによって強引に進められている計画が、この「神戸空港」計画である。
　おまけに、なぜか「防災」に役立つという、いい加減な大義名分まで飛び出している。

　 　埋め立て予定地の海底には、活断層が発見されているにも関わらず「防災に役立つ」らしい。アメリカや日本の進歩的な自治体では活断層の真上に公共施設を造らないというのが常識になっているのに、教訓を投げかけた「神戸市」が、活断層の上に「空港」を造ろうとしているのだから、笑いものである。

　神戸空港の「防災役立つ論」の大義名分は、まだまだ矛盾を持っている。市街地から遠く離れた海上を埋め立てて造成するのだから、市街地住民が脱出したり、ボランティアや救援物資を受け入れたりするにも問題がある。
　飛行機で大量に物資を投入できても空港島から市街地までは、結局海上ルートしかないのだから、防災には無意味なのである。
　大災害の後に造られて、現在では意味をなさない遺物が、この国にはたくさんある。伊勢湾台風の後の「長良川河口堰」、慢性的な大水害に見まわれていた地域を水害から救うという名目で進められた有明海の干拓工事など、あげればキリがない。今となっては、それらがなくても、かつての被災地域に同様の被害は起こることはないという。水害の場合、雨水用のパイプや河川の幅を大きくするとか、海沿いの地域は川そのものではなく、川沿いに堤防を築けば、被害は軽減できるからだ。しかも前例は水害であり、地震のようにインフラ全体を破壊することは、まずあり得ないだろう。

　「無理が通れば道理が引っ込む」とは言うが「阪神・淡路大震災」の負の遺産「神戸空港」も、その仲間入りをしそうである。
　国の機関で唯一、神戸空港に反対していた環境庁が、ある年、創価学会会員の長官を迎えた途端、「神戸空港賛成」を唱え始めた。
　そして、今年、その環境庁は「神戸空港建設で瀬戸内海が汚染される」と言いながら、国家予算3000億円を投入して神戸空港の「尻拭い」計画をぶちまけた…。
　空港本体の建設費用が3100億円（そのうち国家予算は500億円、あとは神戸市の借金で建設される）なのに対して、その尻拭いに、更に国費100％…3000億円の血税が神戸港沖に捨てられようとしているのだ。