第6号斜説〜観光復興の足を引っ張る「異人館ビジネス」

1998年3月1日
 北野町の異人館街を歩くと「共通入場券」売場なるものをたくさん見かける。
 だいたい1500円から2000円程度で、この入場券が買える。
 しかし、これが今、トラブルメーカーで、観光客の不評を買っている。
 なんと「共通入場券」なのに、入られない異人館が多数あるのだ。
 というのも「共通入場券」というのは、3種類もあって、有料異人館では、この3種類はそれぞれ互換性がない。つまり「共通」なのに、共通でないのである。
 つまり「共通」入場券の「共通」とは3つの観光業者の「なわばりで共通」というだけであって、異人館街すべてで「共通」ではないのだ。
 この春、あるいはゴールデンウイークに神戸へ観光に訪れようとお考えの方は注意してほしい。

 強いて3つの共通券で入られる異人館は、風見鶏の館、萌黄の館、ラインの館の3館。しかし、この3館は神戸市直営のため、無料で入館できるの施設なのだ。(入館に入場券は不要)

 さて、この入場券は最近になって生まれたものではない。すでに20年ほど前から存在し、当時からトラブルが耐えない代物だった。
 そこに震災、そして復興。それでもこの悪態は、今も脈々と生き続けている。
 観光業者側の言い分では「人気のある館と不人気の異人館の格差をなくすため」というが、その論理に観光客の立場はない。
 また「坂道の急勾配といった地形的問題もあって、どうしても坂道の上にある異人館は観光客に嫌われる」ともいう意見もある。しかし、急勾配の坂道を登り切ったところにある有料館「うろこの館」は無料館「風見鶏の館」に次ぐ人気異人館であるのも事実だ。

 そもそも異人館の魅力は、日本に住む外国人が、どのような暮らしをしていたかを知ってもらう文化的価値にあると思う。その上に観光的要素として、ハイカラな洋風建築、調度品の公開がある。
 有料異人館の場合、市営異人館と違って「私営」であるため、異人館施設を維持するために有料公開をしなければならない。その論理は、わかる。
 有料公開館の筆頭ともいえる「うろこの館」の場合、他の異人館と区別化するため美術館を併設し「付加価値」をつけているが、大多数の有料異人館の場合、その内容が似たり寄ったりの感が否めない。
 ある「共通」入場券の中には「本当に異人館?」と思えるような施設もある。有料館なのに中にはいると土産物しか売っていなかったり、喫茶店になっているというところすらある。
 震災復興で「復興資金」稼ぎをしたい理由もわかるが、あまりに「営利優先」主義に走りすぎたため本来の「異人館」の観光資源を見失っているのではないかと思う。

 4月に明石海峡大橋が開通し、神戸は四国方面と陸続きになり、その経由地として、ますます、神戸へ訪れる人が増えるだろう。そして、異人館街は神戸最大の観光地である。
 震災を契機に、もう少し観光客サイドに立って、「異人館ビジネス」を考えてみてはいかがだろうか。

斜説余録〜異人館観光のツボ

1998年3月1日
(1)本当に「異人館」を楽しみたいのであれば、トラブルの元である共通入場券を買わない。
見たい施設だけの入場券を買う。また、神戸市営の無料異人館「風見鶏の館」と「萌黄の館」は国の重要文化財にも指定されていて、なおかつ無料で入館できる。
※ただし、公開異人館をすべて見たい方は、3種のすべての共通入場券を購入すると、1つ1つの入場券を買うよりも、少しばかり割安になる。

(2)異人館は北野町一角だけではない。
動物園の中の異人館
市立王子動物園の中には、異人館で唯一切手になった「旧ハンター住宅」がある。
普段は内部未公開だが、ゴールデンウイーク中は公開される。
もともと北野町にあった同館を動物園に移設したもの。今も北野町には「ハンター坂」という坂があるが、もともと坂の突き当たりに、この異人館が建っていた名残である。
(阪急「王子公園」駅下車すぐ)

人工島の異人館
なぜか、人工島ポートアイランドにも「みなと異人館」がある。
この異人館も、もともと北野町に建てられていたものを移設したもの。1階は喫茶店だが、2階展望室は無料公開。神戸港を一望できる。

建物だけを鑑賞するなら、兵庫県庁周辺、塩屋・舞子地区も要チェック
新神戸から地下鉄で2駅「県庁前」周辺にもおしゃれな建物が多い。庭園「相楽園」の中には洋館「ハッサム邸」、すこし西へ行けば中国建築「関帝廟」、また大地震直後、政府機関の最前線基地となった「兵庫県公館」もハイカラ。ここは内部の一部を公開している。
明石海峡大橋の本土側のアクセスポイントとなる舞子に近い塩屋地区にも「旧グッゲンハイム邸」「旧ジェームス邸」など由緒ある洋風建築が多数あるが非公開。
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