第15号斜説〜これでいいのか?神戸空港計画!財政編

1999年9月1日
 今月中旬から、神戸空港島の埋め立てが始まります。その一方で、7月から8月に行われた自主管理住民投票「神戸空港・市民投票」の開票結果のうち、神戸市内で投じられた空港反対票は220,894票もあり、市民の空港への不信感は今も根強いことが数の上で証明されました。(「神戸空港・市民投票」の結果詳細はここをクリック!!)。
 当局は「市民の理解を得ながら空港計画を進める」と言い続けていることから、現状でも空港について市民の理解が得られていないことは市も理解しているようです。
 その原因のひとつに空港に関する情報の少なさがあげられます。何しろ推進派市会議員ですら選挙ポスターに「神戸空港は国際空港」と書き、ましてや、こういう議員を当選させてしまう神戸市民がいるのですから当然のことでしょう。

 今回は市民生活に影響を及ぼしかねない「市の財政」から「空港」の疑問点を探ってみました。
 財政状況は市の広報誌に掲載されていますが、広報課は知ってか知らずか、市の借金の項目をあまりにも小さく扱っています。現在、市が抱える借金(市債)は約2兆円。これに関わる市債償還(借金の返済)は2000年度に市税などの収入の20%に達すると言われています。
 これに加えて市が明確にしている神戸空港関連の市債(以下「空港債」)発行予定は2100億円。もちろん利息を付けて返済するので最終的には2600億円ほどを返済しなければなりません。この借金返済には空港島の土地売却益(土地だけでなく、飛行機の格納庫なども売るらしい)と開港後の着陸料収入を合わせた3000億円をあてる予定です。
 ところが、着陸料収入について、昨年秋の神戸市会で市長は「22億円の着陸料収入で、このうち費用の支出は2億円」と予想しているものの、規制緩和などで「この数字が2/3になるのか1/2になるのかはわからない」と答弁しています。つまり、空港で得られる収入が市の計算通りにならないことを市長が明らかにしたのです。
 返済原資のほとんどを占める土地売却益についても、空港島やターミナルビルを売るとしていますが、ターミナルビルについては明確に予算化されておらず、その詳細は不明です。
 なお、空港島の土地は3年後の2002年から売りに出されます。

 空港島売却の行方を占うポートアイランド2期(以下「ポーアイ2期」)については、市が処分を予定している288haのうち、現在204haが売れ残っています。しかも売却済みの土地のほとんどは市や県の第3セクターが購入しています。まるでマッチポンプです。
 ポーアイ2期には2000年〜2001年度完成予定の「国際ビジネスサポートセンター」「スーパーコンベンションセンター」「キメックワールド」などの事業が目白押しですが、その建設について、いまだに白紙状態です。またダイエーが建設を予定している大規模集客施設もめどがたっていません。
 さらに、神戸空港の財布である「新都市整備基金」管轄の処分地は94%も売れ残っています。なにしろ、ポーアイ2期は「神戸空港開港後の利便性」を売り文句にしているだけに、今後も土地が売れ残った場合「空港債」の償還は市税から負担ということにもなりかねません。

 空港建設費3140億円が1人歩きしていますが、これには「空港関連」の費用は計上されていません。
 その一つであるポートライナー延伸工事を例にとってみましょう。
 ポートライナーの経営は「神戸新交通株式会社」が行っています。この会社は98年3月時点で187億円の赤字を抱えています。
 ところが、この会社は神戸市の第3セクター。この赤字会社に対し、市は赤字を補てんすることを決めています。さらに同社への増資も含めると、この会社のために市が負担する額は300億円になると発表しています。
 300億円のうち一部は、市から神戸新交通に貸し付け、神戸新交通は空港乗り入れの運賃収入などで2015年までに市に返済するそうです。
 空港が市の青写真通りに順調に軌道に乗ればいいのですが、空港が転ければ「不良債権」として市民に負担がのしかかるかもしれません。

 空港開港5年後の2010年。「空港債」の返済はピークを迎えます。その返済額は年間730億円に達し、これにくわえて、現時点でも「兆」単位の市の借金返済もあります。
 財界トップの1人、経団連の今井敬会長も神戸空港計画は「かなりの負担が神戸市民にかかる」と発言しています。
 ここ2年間でも、水道料金の値上げ、市営地下鉄の運賃値上げ、保健所の統廃合計画と、市民生活に影響が出ています。

 市長は「子や孫のために」今、空港を造っておく必要があるといいますが、子や孫に空港と一緒に空港のツケも残すことはないのでしょうか?
 市は空港開港後の経済効果で年間300億円の市税収入の増加があると言います。現在でも約2兆円の借金があるのに、空港の経済効果による税収増で、これらを完済するには何年かかるのでしょうか?
 空港債の償還(返済)期限までに、計算通りの返済資金が市に入らなかった場合、その損失は誰が負担するのでしょうか…市当局は着工前に市民に説明するべきです。

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