阪神・淡路大震災〜義援金はどうなった?

1998年1月17日発表
●意外に知られていない「義援金」
 まさに、全国、全世界の皆様に感謝と御礼を言わなければならないのが、1788億円にも上る「兵庫県南部地震災害義援金」です。
 災害義援金では過去最高額になりますが、政府の住専支援額の4分の1、金融機関支援の160分の1の金額にしかならないのは、いかに、この国が生身の人間軽視の政策を行っているかが、よく伺えます。

 義援金の主な配分は、下の表の通りです。
義援金名称交付対象者交付金額申請締め切り
死亡者・行方不明者義援金死亡、行方不明者1名につき10万円交付終了
住宅損壊見舞金全壊・半壊・全焼・半焼した住宅に住んでいた世帯1世帯につき10万円交付終了
住宅損壊見舞金(追加配分)同上世帯で95年度所得が690万円以下1世帯につき5万円前回申請者で該当者には自動的に振り込み
重傷者見舞金1か月以上の治療を要した負傷者1人につき5万円交付終了
要援護家庭激励金全壊・半壊・全焼・半焼した世帯で、なおかつ独居高齢者、母子・父子家庭、両親のいない児童、重度身障者、特別疾患患者、重度公害認定患者、原爆被爆認定者がいる世帯および生活保護世帯1世帯につき30万円交付終了
被災児童・生徒教育助成金全壊・半壊・全焼・半焼した世帯で、児童、生徒がいる世帯1〜5万円学校を通じて申請。
終了
住宅助成義援金全壊・半壊・全焼・半焼した世帯で、その後民間賃貸住宅に転居した世帯または持ち家の補修に200万円以上の経費を要した世帯
(所得制限あり)
1世帯につき30万円99年3月末まで
(延長されました)
被災児童全壊・半壊・全焼・半焼した世帯で、震災により両親または父母のいずれかを失った児童、生徒がいる世帯100万円 
 住宅損壊義援金に関連して、1世帯あたりの義援金交付額は、雲仙普賢岳の噴火災害、奥尻島の津波地震災害の義援金(全壊世帯=800万〜1200万)よりも遙かに少ないことがわかります。
 雲仙、奥尻は義援金だけで家を再建できたにも関わらず、阪神・淡路大震災では避難生活の食料品、消耗品に「住宅損壊見舞金」が消えていきました。
 被災世帯が多いこともあげられますが、あまりにも低い水準であることは否めません。


●仮設住宅から公営住宅に転居しても、もらえない「住宅助成義援金」
 少額とはいえ、比較的金額が大きいのが「住宅助成義援金」です。被災者の間では通称「引っ越し代」と呼ばれています。
 (実際に受け取れるのは、転居後、住民票を異動してから申請し、それから約1か月後に指定口座へ振り込まれる)
 ちなみに、交付金額は、地震後のどさくさに長田税務署員が不正還付で懐に入れていた国税の100分の1にしかなりません。

 しかも、この義援金はすべての住宅滅失者が受け取れるものではないのです。

(1) 「民間賃貸住宅」(公団住宅を含む)に転居した世帯
(2) 持ち家の場合は、補修費用に200万円以上の経費がかかった世帯
 このいずれかの条件に当てはまらないと受け取れないのです。

 まず、(1)の場合、

・仮設住宅にいる限りは交付されない。
・仮設住宅から転居しても、引っ越し先が公営住宅の場合は交付されない。(転居先が公団住宅の場合は交付される)
 (2)の場合、
   ・分譲マンションの補修の場合は、かかった総費用が世帯割りにして200万円以下だと交付されない。

 被災後の生活パターンによっては、同じ被災程度でも交付義援金額に約3倍の差が生じるのです。
 「引っ越し代」と言われているものの、転居先によっては、引っ越し代にならないわけです。

 「義援金募集委員会」では当初「住宅助成義援金」の交付総額を911億円としていましたが、申請状況から、実際にはその半分にも満たないのではないかということで、大地震から2年半経った97年6月に「住宅損壊見舞金」として5万円を追加配分しました。
 実質、この追加配分が、一般被災者向け義援金の最終交付になると言われています。
 それでも百億単位で義援金が余ると言われており、そのうち150億円は被災市町が被災状況に応じて自治体独自に分配できるようになっていますが、まだ、その具体的な配分を決めた市や町はありません。
 被災者救援に未だ活かされていない残額の取り扱いについて、本誌では今後も、その使途に注目していきます。

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