少年審判全記録 |
最終更新:1997年10月18日 |
●97年10月17日・第5回少年審判(結審)=神戸家庭裁判所 13時30分、酒鬼薔薇聖斗の両親、弁護士5名、裁判官と書記官らが出席して、この事件での最後の少年審判が始まりました。 14時52分、鑑定書に添えられた意見書と、弁護団が裁判所に提出した意見書の趣旨通り、酒鬼薔薇聖斗に「医療少年院送致」の決定が下されました。 ただし裁判官は「一連の犯罪は少年によるもの」と認定しました。 日本を震撼させた凶悪殺人事件の「行政手続き」はすべて終了したのです。 この「医療少年院送致決定」は、犯罪者だけど、酒鬼薔薇聖斗は「病人」であるという判定を裁判所が下したことになります。 すなわち、被害者側最後の手段といわれる、酒鬼薔薇聖斗自身を民事訴訟で告訴することはできなくなったわけです。 両親に対する民事訴訟の道が残されていますが、こうなると両親の監督責任が問われるだけで、事件そのものについて言及されることはありません。 つまり、事件の本質を問う意味で、公開の場での事件解決の道が閉ざされたのです。 1997年10月17日14時52分、稀代の殺人犯「酒鬼薔薇聖斗」は社会から隔絶されたところで更正の道を歩みだしたのです。事件への謝罪も反省もなく・・・
●97年10月13日・第4回少年審判=神戸家庭裁判所 10月13日13時30分、第4回少年審判が開かれました。 この日は証人はなく、酒鬼薔薇聖斗と、その弁護人、そして両親が出席しました。 今回は母親に対する尋問が主で、これまでのしつけや、酒鬼薔薇聖斗本人の生い立ちについて答えました。 答弁では、事件に対する新たな事実は出なかった模様です。 ただ、両親に対して、酒鬼薔薇聖斗が社会復帰後、管理する能力があるのかどうかを裁判官は問いただしたようです。 この少年審判を担当している神戸家庭裁判所の井垣康弘裁判官は、17日午後に予定されている審判で、酒鬼薔薇聖斗に対する少年審判を終えることを表明し、当初予定されていた友が丘中学教師の尋問も「裁判所の調査だけで十分」として、見送られました。 なお、酒鬼薔薇聖斗の鑑別所収容期間は10月18日までに延長されることが決まりました。 ●97年10月9日・第3回少年審判=神戸家庭裁判所 10月9日14時30分、第3回少年審判が開かれました。 この日は証人として、酒鬼薔薇聖斗の精神鑑定を行った精神科医、そして、初めて酒鬼薔薇聖斗の両親が出席しました。 まず、前半部分では、酒鬼薔薇聖斗は、5月の男児殺害事件での殺意を認める発言をしました。 しかし、酒鬼薔薇聖斗の弁護士は「事件に対する反省はしていない」と語っています。 また、3月の女児通り魔殺人についての殺意は否認しました。 少年審判の後半では、性格分析に話が及ぶため、酒鬼薔薇聖斗は途中で退室させられました。 精神科医は、酒鬼薔薇聖斗は周囲の出来事に対する認識能力に欠けるという指摘。両親も、母親は「息子は善悪の区別がつかない」と語ったもようです。 もし、家裁から漏れ伝える母親の発言が事実だとすれば、これは、両親の監督責任も何らかの形で追及されなければなりません。 ●97年10月6日・第2回少年審判=神戸家庭裁判所 10月6日13時30分、精神鑑定書が家裁に提出されてから初めての少年審判が再開されました。 第2回目の審判では、酒鬼薔薇聖斗を取り調べた警察官2名が証人として招かれ「供述の信憑性」についての尋問が行われました。 席上、酒鬼薔薇聖斗の弁護士は神戸新聞社宛の第2犯行声明の文字と自宅から押収された作文の文字の照合が終わっていないうちに警察官が「筆跡が一致した」と言って、酒鬼薔薇聖斗の供述を引き出したとし、 違法な取り調べで行われた自白であり、警察から提出された自白調書を証拠から外すよう、裁判長に要求しました。 証人の警察官も「そのような事は言っていない」と反論しました。 この審判で裁判長による酒鬼薔薇聖斗への尋問も行われましたが、どのような質疑応答があったのかは公表されていません。 なお、今回も酒鬼薔薇聖斗の両親は実の息子の審判を欠席しました。 ●97年10月2日・精神鑑定書提出 10月2日午前9時30分、酒鬼薔薇聖斗の精神鑑定を行った精神科医2名によって神戸家庭裁判所に精神鑑定書が提出され、事実上、停止していた「少年審判」が再開されました。 鑑定書では、まず、神戸地検が発表した「祖母の死」が、今回の凶行の直接の原因ではなかったと指摘し、「行為障害」による凶行だったとしています。 「行為障害」とは、大人の「人格障害」に相当します。精神医学の世界では、18歳未満は人格が形成されていないと見なすため「行為障害」という用語を使います。 また「犯行当時、善悪の判断はできた」とも指摘しています。 今回の鑑定で注目されているのは「性障害」が認められた点です。 この鑑定書の「性障害」とは、性障害が単独で発生したのではなく、前述の「行為障害」と併せて発症し、結果として性的サディズム(自分の快楽を得るために、相手をむやみに傷つける行為)と同様の快感を得ていたのではないかという見方です。 一部のマスコミでは、この「性障害」だけを興味本位に取り上げて報道しているところがありますが、単独で「性障害」が出たのではなく、「行為障害」と合わさった形で「性障害」と同じ症状が見られたというだけのことです。 この認識を誤ると事件の本質を見失うことになります。
結論として、この鑑定結果は、酒鬼薔薇聖斗は「神」や「魔物」の妄想から犯行に及んでいたのではなく、残虐的な性格になってしまった上で、その言い訳のために「神」や「魔物」を作り上げたと見たほうが正しいのかも知れません。
鑑定書提出を受けて、担当裁判官は少年鑑別所に出向き、2週間の監護措置の延長を決定しました。 これからの少年審判では、8月の第1回少年審判に欠席した酒鬼薔薇聖斗の両親に出席を求めるほか、友が丘中学の担任教諭の出席も予定され、精神鑑定段階の少年の発言に食い違いはないか、意見を求めることとしています。
なお、10月2日、提出された鑑定書には「隔離した環境で精神科医の診察が必要」との意見書が添えられ、家裁側も、この意見書の趣旨に添って「医療少年院」送致の処分を発表するものと思われます。 ●97年8月4日=第1回少年審判=神戸家庭裁判所 8月4日15時30分頃より神戸家庭裁判所で酒鬼薔薇聖斗に対する第1回の少年審判が開始されました。 今回は、酒鬼薔薇聖斗と弁護士1名、調査官4人、そして裁判官、書記官が出席。ただし、酒鬼薔薇聖斗の両親は欠席しました。 家裁送致時点で弁護側が申請した精神鑑定が裁判官により認められ、酒鬼薔薇聖斗は60日間の鑑定留置となった。この間、少年審判は中断する。 60日間(10月2日まで)とは言うものの延長も可能です。もし、精神鑑定で「酒鬼薔薇聖斗に責任能力なし」となっても、無罪放免にはならず、医療少年院送致となり、最長で26歳まで収監できます。あくまでも「最長」です。 ただし、その場合、被害者側が予定している民事裁判で少年を直接訴えることは出来なくなります。 少年審判での処分は順調にいけば、10月下旬に決定される予定です。 ちなみに、精神鑑定では精神医による面接、心理テストのほか、脳のCTスキャン撮影なども行われる予定。 なお、少年審判と精神鑑定結果は被害者にも非公開です。 |
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