●注釈
※ここで公表するものは1998年6月9日〜7月23日まで縦覧が行われた「空港島埋立事業に係る環境影響評価準備書」の内容を簡潔にまとめたものです。
※実際の「準備書」は、図面写真、詳細な表などが添付されていますが、あまりにも膨大なため割愛しました。ただし、具体的な数値については、わかりやすく表にまとめました。
※文中の「(略)」は、内容が重複したり、空港建設とは直接関係のないデータ(予測データの基礎となるデータ等)、ここの趣旨とは関係のない事務的な事項について、こちらで略した項目です。
※掲載部分はすべて神戸市発表の文章をそのまま引用しています。
◆目次◆
- はじめに
- 1 対象事業の概要
- (1)事業者の名称、代表者の氏名及び主たる事業所の所在地
- (2)対象事業の名称並びに種類及び環境
- (3)対象事業の目的
- (4)対象事業の位置
- (5)土地利用計画
- (6)埋立工事施工計画
- 2 環境への事前配慮
- (1)基本的配慮
- (2)自然環境の保全
- (3)生活環境の保全
- (4)快適環境の保全・創造
- (5)地球環境保全への貢献
- 3 環境の現況
- (略)
- 4 予測及び評価項目の選定
- 5 環境に及ぼす影響の予測及び評価
- (1)予測の前提条件
- (2)大気質
- (3)騒音
- (4)振動
- (5)潮流
- (6)水質、底質
- (7)景観
- (8)その他
- (9)総合的な評価
- 6 環境保全対策
- (1)予測の前提条件
- (2)大気質
- (3)騒音
- (4)振動
- (5)潮流
- (6)水質、底質
- (7)景観
- (8)その他
- (9)総合的な評価
- 7 事後調査の計画概要
- (1)埋立工事に係る事後調査
- (2)存在に係る事後調査
- (3)その他
- 参考
- おわりに
- 活断層
◆はじめに
空港島埋立事業(以下「本事業」という。)を実施するにあたり、「環境影響評価の実施について」(昭和59年8月 閣議決定)、「運輸省所管の大規模事業に係る環境影響評価の実施について」(昭和60年4月 運輸省)及び「神戸市環境影響評価塔に関する条例」(平成9年 神戸市)に基づき、空港島埋立事業に係る環境影響評価準備書(環境影響評価書案)をとりまとめました。
とりまとめるにあたっては、「埋立て及び干拓に係る環境影響評価指針」(昭和61年3月 運輸省)及び「神戸市環境影響評価等技術指針」(平成9年12月)に従うとともに、「空港島埋立事業に係る環境影響評価実施計画書」(平成10年1月)に係る住民の「意見」及び市長の「調査意見書」(平成10年4月)を勘案し、環境の現況把握、本事業が環境に及ぼす影響の程度等について予測・評価を行い、あわせて公害の防止及び自然環境保全のために講じる措置について検討を加えています。
(後略)
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◆1 対象事業の概要
(1)事業者の名称、代表者の氏名及び主たる事業所の所在地
- 名称:神戸市
- 代表者の氏名:神戸市長 笹山幸俊
- 所在地:(略)
(2)対象事業の名称及び環境
- 1)名称 空港島埋立事業
- 2)種類及び規模 公有水面の埋立:埋立面積272ha
(3)対象事業の目的
神戸空港は、神戸都市圏の航空利用者の利便を図るとともに、兵庫県地域航空システムの母港として、また、中・長期的なまちづくりの視点から神戸の復興を支える不可欠な都市基盤として整備するものである。さらに、阪神・淡路大震災の教訓をふまえ、緊急対応が必要な初動時における人命救助・救急物資輸送に対応するため、海・空・陸の多用な交通手段を備えた防災拠点として整備する。
空港島においては、大規模な浅場を有する緩傾斜石積護岸(環境創造型護岸)や人工ラグーン(海水浄化池)を導入する等の様々な環境対策を実施し、神戸海域の環境改善に資するものとする。
(4)対象事業の位置
ポートアイランド1期から約3kmの沖合の水域。
(5)土地利用計画
空港島の面積は272ha
用途名 |
面積(ha) |
埠頭用地 |
4.1 |
港湾関連用地 |
1.7 |
都市開発用地 |
15.5 |
交通機能用地 |
空港施設用地 |
153.6 |
空港関連施設用地 |
80.1 |
緑地 |
17.0 |
合計 |
272.0 |
(6)埋立工事施工計画
1) 工事の概要
埋立工事は護岸、岸壁等を築造する護岸工と埋立用材の投入等を行う埋立工よりなる。
埋立工事に先立ち、周辺海域に濁りが拡散することを防止するため、埋立区域の周囲に汚濁防止膜を展張する。
2) 護岸の構造等
外周護岸の総延長約7.7kmのうち岸壁等の一部区間を除く約6.7kmについては、海域の環境保全の観点から大規模な浅場を有する緩傾斜石積式とした。岸壁及びその周辺護岸、持揚場については、利用目的に応じてそれぞれケーソン式、直立消波ブロック式とした、また中仕切護岸は石積式とした。
3) 埋立工
埋立地の高さは海面から5〜5.5mを標準とした。
埋立用材については浚渫土砂及び建設残土を中心に受け入れる。
沈下量等を考慮した埋立用材の受け入れ総量は6600万立方メートルである。
なお、一部を除き埋立用材等は海上搬入を原則とし、工事用車両の通過による事業予定地近傍地域における道路交通公害の防止につとめる。
また、工事の実施にあたっては濁りの発生を抑制するため、埋立用材の投入は外周護岸や中仕切護岸などの護岸概成後に行うこととし、埋立用材運搬船などの作業用船舶が出入りする外周護岸の開口部には、汚濁防止膜を展張することとする。
4) 工事工程計画
(略)
5) 埋立資材
空港島の埋立工事において使用する埋立用材は6600万立方メートルであり、その内訳を表に示す。
埋立用材 |
数量
(万立方メートル) |
建設残土(山土)等 |
6200 |
浚渫土砂(底泥含む) |
400
(うち底泥120) |
合計 |
6600 |
6) 施工機材
(略)
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◆2 環境への事前配慮
(1)基本的配慮
神戸空港計画については、平成元年12月市民代表、県議会・市会議員、学識経験者等の委員からなる神戸空港基本計画検討委員会を設け、航空機騒音、道路交通騒音、大気汚染、水質汚濁及び流況の影響など環境面での検討を行い、事業の位置決定を行ったほか、種々の適切な環境保全上の措置を計画に盛り込むなど、その立案段階から環境への事前配慮を施している。
また、事業の位置を海上に求めたことから、埋立については「瀬戸内海環境保全特別措置法」及び「瀬戸内海環境保全特別措置法第13条第1項の埋立についての運用に関する基本方針」の趣旨に十分配慮を工夫した。
(2)自然環境の保全
埋立面積を必要最小限とするとともに潮流の影響が軽微となる埋立形状にし、空港島周囲に大規模な浅場部を有する緩傾斜石積護岸(環境創造型護岸)や人工ラグーン(海水浄化池)を整備し、多用な生物生息環境の創出を図る。
また、神戸港内の浚渫で発生する底泥の受け入れを行い、底質改善による事業予定地周辺の生物生息空間の再生・創出に資する。
(3)生活環境の保全
埋立工事にあたっては、一部を除き埋立用材等は海上搬入を原則とし、工事用車両に伴う道路交通公害の防止を図る。また、コンクリート型枠は鋼製品を主とし再利用率を高めるなど廃棄物の減量化、リサイクルの推進を図り、建築廃材の排出量の抑制を図る。
(4)快適環境の保全・創造
人工ラグーン(海水浄化池)に砂浜を整備し、市民の親水活動の場として開放するとともに、その他の水際線も一部に階段式護岸を設けるなど親水性の高いものとし、併せて背後に緑地を整備することなどにより、市民に開かれた水辺の確保を図る。
(5)地球環境保全への貢献
(略)
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◆3 環境の現況
(略)
◆4 予測及び評価項目の選定
本事業の内容などから環境に影響を及ぼすおそれのある行為等と環境要素の関連並びに地域の概況及び環境の現況を勘案し、予測及び評価を行う環境要素を設定した。
なお、悪臭、地下水、土壌、オゾン層破壊については、本事業において影響を与える原因となる行為などがないこと、地盤、日照、風害については、事業予定地が既存の居住地域から十分に離れていること、地形・地質、人と自然との触れ合いの場、保存すべき文化財などの所在地から十分離れていること、植物については、影響を受けるおそれのある保全すべき藻場から十分離れており、また事業予定地の周辺海域に保全すべき貴重な水生生物も存在しないことより、予測・評価項目から除外した。
予測・評価項目の選定理由及び予測方法等
環境要素 |
区分 |
予測・評価項目 |
選定理由及び予測方法 |
大
気
質 |
一般環境 |
工事 |
・二酸化硫黄
・二酸化窒素
・浮遊粒子状物質 |
作業船などの稼働及び工事用車両の走行時の大気汚染物質の排出による大気質への影響が考えられるため、主要な排出物質について、数値シミュレーションを行い、予測する。 |
沿道環境 |
工事 |
・二酸化硫黄
・二酸化窒素
・浮遊粒子状物質 |
騒音 |
工事 |
・建設作業騒音
・道路交通騒音 |
作業船などの稼働及び工事用車両の走行に伴い騒音の発生が考えられるため、数値計算を行い予測する。 |
振動 |
工事 |
・道路交通振動 |
工事用車両の走行に伴い振動の発生が考えられるため、数値計算を行い予測する。 |
潮流 |
存在 |
・流向 ・流速 |
潮流の変化が考えられるため、数値シミュレーションを行い、流向・流速の変化について予測する。 |
水質 |
工事 |
・濁り物質 |
濁りの発生による水質への影響が考えられるため、数値シミュレーションを行い予測する。 |
存在 |
・化学的酸素要求量
・全窒素
・全燐 |
潮流の変化に伴い水質への影響が考えられるため、主要な汚染物質について、数値シミュレーションを行い、予測する。 |
底質 |
工事 |
・濁り物質の堆積厚 |
濁りの発生に伴う濁り物質(土砂)の堆積による底質への影響が考えられるため、堆積厚について、数値シミュレーションを行い予測する。 |
存在 |
・底質の変化の程度 |
水質の変化に伴い底質への影響が考えられるため、水質の予測結果などを踏まえ、底質の変化の程度について予測する。 |
動物 |
工事 |
・鳥類の生息環境の変化の程度 |
濁りの発生に伴う貴重な鳥類の生息環境への影響が考えられるため、水質の予測結果などを踏まえ生息環境の変化の程度について予測する。 |
存在 |
・鳥類の生息環境の変化の程度 |
水質の変化に伴う貴重な鳥類の生息環境への影響が考えられるため、水質の予測結果などを踏まえ生息環境の変化の程度について予測する。 |
生態系 |
工事 |
・生態系の変化の程度 |
濁りの発生に伴う生態系への影響が考えられるため、植物・動物の成育、生息環境の変化の程度の予測等を行った上で、生態系の変化の程度について予測する。 |
存在 |
・生態系の変化の程度 |
生態系への影響が考えられるため、植物・動物の成育、生息環境への変化の程度の予測等を行った上で、生態系の変化の程度について予測する。 |
景観 |
存在 |
・景観の変化の程度 |
景観への影響が考えられるため、主要な視点場における景観の変化の程度についてフォトモンタージュ法により予測する。 |
廃棄物 |
工事 |
・廃棄物の発生の程度等 |
廃棄物の発生が考えられるため、廃棄物の発生の程度等について予測する。 |
地球温暖化 |
工事 |
・地球温暖化抑制のための措置等 |
温室効果ガスの発生による地球温暖化への影響が考えられるため、地球温暖化について省エネルギー対策等の温室効果ガス発生抑制装置・効果等を検討し予測する。 |
評価の手法
環境要素 |
評価の手法 |
大気質 |
予測結果と環境保全目標との比較により、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で、支障があるのかどうかを評する。 |
騒音 |
振動 |
潮流 |
水質 |
底質 |
動物 |
予測結果と環境保全目標との比較により、自然環境、社会環境などの重要さなどに応じた適切な保全を行う上で、支障があるかどうかを評価する。 |
生態系 |
景観 |
廃棄物 |
地球温暖化 |
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◆5 環境に及ぼす影響の予測及び評価
(1)予測の前提条件
空港島の埋立工事が環境に及ぼす影響にあたっては、「1 対象事業の概要」に示した埋立工事施工計画等を前提条件とし、予測対象時期は、埋立工事が環境に及ぼす影響が最大になる時期とし、予測項目ごとに設定した。
また、空港島の存在が環境に及ぼす影響の予測にあたっては「1 対象事業の概要」に示した対象事業位置などを前提条件とし、予想対象時期は空港島の完成時とした。
(2)大気質
1) 一般環境大気質
埋立工事が一般環境大気質に及ぼす影響を把握するため、主要な排出物質である二酸化硫黄、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質を予測項目とし、拡散シミュレーションによる予測を行った。
工事中の一般環境大気質に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:環境基本法に定められた環境基準の達成と維持に支障がないこと。
予測結果
大気汚染物質 |
工事中の寄与濃度にバックグラウンド濃度を加えた将来濃度 |
環境上の条件 |
港島中学校 |
南公園 |
二酸化硫黄 |
0.030ppm |
0.022ppm |
1時間値の1日平均値が0.04ppm以下であり、かつ1時間値が0.1ppm以下であること |
二酸化窒素 |
0.057ppm |
0.049ppm |
1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内またはそれ以下であること |
浮遊粒子状物質 |
0.079mg/立方m |
0.072mg/立方m |
1時間値の1日平均値が0.10mg/立方m以下であり、かつ1時間値が0.20mg/立方m以下であること |
以上のことから、空港島の埋立工事が一般環境大気質に及ぼす影響は軽微であり、大気汚染に係る環境基準の達成と維持に支障がなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
2) 沿道環境大気質
埋立工事に伴い発生する工事用車両の走行が事業予定地近傍地域の幹線道路周辺の沿道環境大気質に及ぼす影響を把握するため、主要な排出物質である二酸化窒素、一酸化炭素及び浮遊粒子状物質を予測項目とし、拡散シミュレーションによる予測を行った。
予測対象道路は、工事用車両の走行ルートとして指定するポートアイランド内の西側臨港道路とした。
工事中の一般環境大気質に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:環境基本法に定められた環境基準の達成と維持に支障がないこと。
予測結果
大気汚染物質 |
工事中の寄与濃度にバックグラウンド濃度を加えた将来濃度 |
環境上の条件 |
西側臨港道路沿道 |
二酸化窒素 |
0.058ppm |
1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内またはそれ以下であること |
一酸化炭素 |
1.3ppm |
1時間値の1日平均値が10ppm以下であり、かつ1時間値の8時間平均値が20ppm以下であること |
浮遊粒子状物質 |
0.087mg/立方m |
1時間値の1日平均値が0.10mg/立方m以下であり、かつ1時間値が0.20mg/立方m以下であること |
以上のことから、空港島の埋立工事に伴う工事用車両の走行が沿道環境大気質に及ぼす影響は軽微であり、大気汚染に係る環境基準の達成と維持に支障がなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
(3)騒音
1) 建設作業騒音
埋立工事に伴い発生する建設作業騒音が事業予定地近傍地域に及ぼす影響を把握するため、工事中の建設作業騒音レベルについて数値計算(点音源モデル)による予測を行った。
工事中の建設作業騒音に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:大部分の地域住民が日常生活において支障がないこと
予測対象時期における建設作業騒音レベルは、施工区域に最も近い居住地区があるポートアイランド内の住居系地域においては55dB(A)以下となっており、「特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準」に定められている基準値である85dB(A)を下回っている。
このことから、空港島の埋立工事に伴う建設作業騒音が事業予定地近傍地域の生活環境に及ぼす影響は軽微であり、大部分の地域住民の日常生活において支障がなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
2) 道路交通騒音
工事用車両による道路交通騒音が事業予定地近傍地域の幹線道路沿道に及ぼす影響を把握するため、工事中の道路交通騒音レベルについて数値計算(日本音響学会式)による予測を行った。
予測対象道路は工事用車両の走行ルートとして指定するポートアイランド内の西側臨港道路とした。
工事中の道路交通騒音に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:環境基本法に定められた環境基準の達成と維持に支障がないこと
地域の区分 |
対象となる予測地域 |
昼間(8時〜18時)の道路交通騒音レベル |
昼間(8時〜18時)の環境基準 |
2車線を超える車線を有する道路に面する地域 |
ポートアイランド西側臨港道路 |
59dB(A) |
65dB(A)以下 |
以上のことから、空港島埋立工事に伴う環境基準の達成と維持に支障がなく、環境保全周辺地域に及ぼす影響は軽微であり、騒音に係る環境基準の達成と維持に支障がなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
(4)振動
工事用車両による道路交通振動が事業予定地域の幹線道路の沿道に及ぼす影響を把握するため、工事中の道路交通振動レベルについての数値計算(建設省土木研究所提案式)による予測を行った。
予測対象道路は、工事用車両の走行ルートとして指定するポートアイランド内の西側臨港道路とし、予測断面の位置は道路交通騒音と同じとした。
工事中の道路交通振動に係る環境保全目標は以下に示すとおりとした。
環境保全目標:生活環境に支障がないこと。
当面、以下の値をもって評価を行うこと。
昼間(8時〜19時)=65dB以下
工事用車両の走行を含む西側臨港道路沿道での道路交通振動レベルは、昼間51dBであり、環境保全目標に定められた値を下回っている。
以上のことから、空港島埋立工事に伴う工事用車両の走行による道路交通振動が事業予定地周辺地域に及ぼす影響は軽微であり、生活環境にほとんど支障がなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
(5)潮流
空港島の存在が事業予定地周辺海域の潮流に及ぼす影響を把握するため、基準年度(平成6年度)の現況再現性を確認のうえ構築した数値シミュレーションモデルにより予測を行った。
空港島の存在における潮流に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:事業予定地周辺海域の流れの様相に著しい変化を及ぼさないこと
空港島の存在による流況の変化は空港島の周辺に限られており、流速の変化も小さいことから、潮流に及ぼす影響は軽微であり、事業予定地周辺海域の流れの様相に著しい変化を及ぼすことはなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
(6)水質、底質
1) 埋立工事が及ぼす影響の予測及び評価
一 水質
埋立工事が水質に及ぼす影響を把握するため濁り物質を予測項目とし、沈降拡散シミュレーションによる予測を行った。
工事中に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:生活環境にほとんど支障がないこと。
工事中の濁り物質濃度は、護岸工最盛期には施工区域周囲、埋立工最盛期には護岸に設ける開口部の周囲に影響が見られるが、水産用水基準(平成7年12月)に示されている人為的に加えた懸濁物質に係る基準値である2mg/リットルを超える範囲は施工区域に限られていることから、空港島の埋立工事が水質に及ぼす影響は軽微であり、生活環境にほとんど支障がなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
なお、埋立工事に先立ち、埋立区域の周囲に汚濁防止膜を展張することで、さらに濁りの影響は軽減される。
二 底質
埋立工事が底質に及ぼす影響を把握するため、土砂の堆積厚を予測項目とし、数値計算による予測を行った。
工事中に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:底質の悪化を招かないこと。
空港島の埋立工事に伴う土砂の堆積は小さく、事業予定地の周辺に限られている。
このことから、空港島の埋立工事が底質に及ぼす影響は軽微であり、底質の悪化を招くおそれはなく、環境保全目標を満足するものと考えられる。
なお、埋立工事に先立ち、埋立区域の周囲に汚濁防止膜を展張することで、さらに堆積は軽減される。
2) 埋め立て地の存在が及ぼす影響の予測及び評価
空港島の存在が事業予定地周辺海域の水質及び底質に及ぼす影響を把握するため、基準年度(平成6年度)の現況再現性を確認のうえ構築した数値シミュレーションモデルにより予測を行った。
空港島の存在における水質、底質に係る環境保全目標は以下のとおりとした。
環境保全目標
水質:環境基本法に定められた環境基準の達成と維持に支障がないこと。
底質:底質の汚染を進行させないこと。
類型 |
A |
B |
C |
利用目的の適応性 |
水産1級、水浴 自然環境保全及び類B以下の欄に掲げるもの |
水産2級、工業用水及び類型C以下の欄に掲げるもの |
環境保全 |
基準となる化学的酸素要求量 |
2mg/リットル以下 |
3mg/リットル以下 |
8mg/リットル以下 |
空港島周辺で予測される化学的酸素要求量 |
0.2mg/リットル |
類型 |
I |
II |
III |
IV |
利用目的の適応性 |
自然環境保全及び類型II以下の欄に掲げるもの
(水産2種及び水産3種を除く) |
水産1種、水浴及び類型III以下の欄に掲げるもの
(水産2種及び3種を除く) |
水産2種及び類型IVの欄に掲げるもの
(水産3種を除く) |
水産3種、工業用水
生物生息環境保全 |
基準となる全窒素 |
0.2mg/リットル以下 |
0.3mg/リットル以下 |
0.6mg/リットル以下 |
1mg/リットル以下 |
空港島周辺で予測される全窒素 |
0.02mg/リットル |
基準となる全燐 |
0.02mg/リットル以下 |
0.03mg/リットル以下 |
0.05mg/リットル以下 |
0.09mg/リットル以下 |
空港島周辺で予測される全燐 |
0.002mg/リットル以上変化する範囲はない |
空港島の存在により化学的酸素要求量、全窒素及び全燐が変化する範囲は空港島周辺に限られており、水質の変化も小さいことから、空港島の存在が事業予定地周辺海域の水質に及ぼす影響は軽微であり、水質汚濁に係る環境基準の達成と維持に支障がなく、水質に係る環境保全目標を満足するものと考えられる。
また、空港島の存在が潮流及び水質に及ぼす影響は空港島周辺に限られることから、空港島の存在が底質に及ぼす影響は軽微であり、底質の汚染に進行させず、底質に係る環境保全目標を満足するものと考えられる。
(7)景観
空港島の存在が事業予定地周辺地域の景観に及ぼす影響を把握するため、六甲ケーブル山上駅、ポートアイランド(第2期)緑地、事業予定地東側海上を代表的な視点場として、土地利用を想定し、フォトモンタージュ法による予測を行った。
空港島の存在時における景観に係る環境保全目標は、以下に示すとおりとした。
環境保全目標:優れた景観を保全するとともに、対象事業が実施される地域においては良好な景観の創造につとめ周辺景観との調和を損なわないこと
(写真略)
空港島は全体としては港湾景観を中心とする周辺地域の景観と調和するものであり、また、連絡橋、ターミナルビル、ライン整備用格納庫等の施設の整備に際しては、形状、色彩などについて配慮することにより、周辺の景観と調和を図ることが出来ると考えられる。
これらのことから環境保全目標を満足するものと考えられる。
(8)その他
1) 動物
空港島の埋立工事及び存在が事業予定地周辺地域・海域の貴重な鳥類の生息する環境に及ぼす影響はほとんどないことから、空港島の埋立工事及び存在が貴重な動物に及ぼす影響は軽微であり、環境保全目標を満足するものと考えられる。
2) 生態系
空港島の埋立工事及び存在が生物の成育・生息環境に及ぼす影響はほとんどなく、また、生物の成育・生息空間の観点からは、空港島の存在による一部海域の消滅があるものの、影響は小さく、環境創造型護岸においては、自然の磯浜で見られるような豊かな生物相が形成されると考えられることから、生物の多様性及び自然環境の体系的保全が図られ、環境保全目標を満足させるものと考えられる。
3) 廃棄物
空港島の埋立工事に伴う廃棄物については、発生の抑制、排出する廃棄物の適正処理を行うとともに、資源化・有効利用の推進を図ることから、環境保全目標を満足するものと考えられる。
4) 地球温暖化
工事中のに酸化炭素排出量の算定結果によれば、工事中は移出量が最大となる第1年次において、二酸化炭素排出量は6600トンC/年であり、神戸市における二酸化炭素排出量296万トンC/年(平成2年度)に占める割合は約0.2%と小さい。
空港島の埋立工事の実施にあたっては、地球温暖化防止対策の実施の徹底を図ることにより、二酸化炭素排出量を極力抑制し、地球温暖化の防止に貢献するようつとめることとする。
以上のことから、環境保全目標を満足するものと考えられる。
(9)総合的な評価
上記の通り、空港島の埋立工事が大気質(一般環境大気質、沿道環境大気質)、騒音(建設作業騒音、道路交通騒音)、振動、水質、底質、動物、生態系、廃棄物、地球温暖化の9項目の環境要素に及ぼす影響、空港島の存在が潮流、水質、底質、動物、生態系、景観の6項目の環境要素に及ぼす影響について予測、評価を行った結果、いずれの項目も環境保全目標を満足していることから、本事業が環境に及ぼす影響は軽微であり、将来の市民の健全で快適な環境は保全できると考えている。
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◆6 環境保全対策
本事業は、航空機騒音による障害を未然に防止するため、海上空港として整備する神戸空港の用地及び空港関連用地を確保するために実施するものである。事業実施にあたっては、公害防止対策の徹底を図るのみならず、環境に優しい事業として進めることとしており、2に示した事前配慮事項の他、次に示す環境保全対策を行うこととする。
(1)大気質
1) 埋立工事の実施にあたっては、低公害型の機材を選定するとともに、良質燃料を使用し、空ふかしや過度な負荷を避けるなど適正な運転を行い、大気汚染物質の排出量の削減化に努めるよう指導する。
2) 埋立工事により粉じんが発生するおそれのある時は、散水を行うなどの所要の対策を講じる。
3) 工事用車両の管理・使用者に対し、低公害型の自動車の使用、車両の適正な整備・点検、指定並びに空ふかしの防止及び規制速度の遵守など適正な運転の実施を指導するとともに、工事工程計画の策定にあたっては、工事用車両の一時的な集中防止に留意するものとする。
また、洗車及びタイヤ洗浄を励行し、粉じんの発生を抑制するするよう指導するなど大気汚染に及ぼす影響を軽減するよう努める。
(2)騒音
1) 埋立工事の実施にあたっては、低騒音型の機材を選定するとともに、空ふかしや過度な負荷を避けるなど適正な運転を行い、発生する騒音の低減化に努めるよう指導する。
2) 工事用車両の管理使用者に対し、低公害型の自動車の使用、車両の適正な整備・点検、指定走行ルートの遵守、過積載の防止並びに空ふかしの防止及び規制速度の遵守など適正な運転の実施を指導するとともに、工事工程計画の策定にあたっては、工事用車両の一時的な集中防止に留意するものとする。
(3)振動
工事用車両の管理・使用者に対し、低公害型の自動車の使用、車両の適正な整備・点検、指定走行ルートの遵守、過積載の防止及び規制速度の遵守など適正な運転の実施を指導するとともに、工事工程計画の策定にあたっては、工事用車両の一時的な集中防止に留意するものとする。
(4)水質・底質
埋立工事にあたっては、汚濁防止膜を展張すること、護岸概成後に埋立用材を投入することなどにより、濁り物質の拡散防止を図るほか埋め立て地から濁水が直接海域に流入することを防止するための雨水排水及び沈砂池の設置など、所要の措置を講じる。
(5)その他の環境基準
潮流、動物、生態系、景観、廃棄物の減量化、資源化、地球温暖化への影響の軽減等のために必要に応じ、適切な保全対策を講じることにより環境保全に努める。
また、埋立工事の段階で事業予定地において文化財が発見された場合には、神戸市教育委員会と十分協議のうえ調査を行い、保全などに関する適切な措置を講じることとする。
(6)その他の保全対策
公害苦情の発生している事業所の移転用地として都市再開発用地を整備するほか、市内で発生する建設残土、浚渫土砂を積極的に受け入れるなど、市街地の環境改善などに資するように努める。
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◆7 事後調査の計画概要
本事業の実施にあたっては、6の環境保全対策を講じることなどにより環境への影響を可能な限り軽減するよう努めるほか、本事業の工事及び存在が環境に及ぼす影響の程度等について把握し、必要に応じ所要の措置を講じるため事後調査を行うこととする。
事後調査の基本的な考え方は次の通りであり、今後、学識者の指導、関係機関との協議・調整を踏まえ、「神戸市環境影響評価等に関する条例」に基づき、調査の期間、頻度、地点、方法及び実施体制などを定めた事後調査計画書を作成する。
(1)埋立工事にかかる事後調査
1) 大気質
埋立工事の実施に伴う大気汚染について、定期的な測定などの調査を行う。
2) 騒音
埋立工事の実施に伴う建設作業騒音、工事用車両の走行に伴う道路交通騒音について、定期的な測定などの調査を行う。調査対象となる地点は工事施工区域との距離、工事用車両の走行ルート、土地利用状況を勘案し設定するものとする。
3) 振動
埋立工事の実施による工事用車両の走行に伴う道路交通振動について、定期的な測定などの調査を行う。調査対象となる地点は、工事用車両の走行ルート、土地利用状況等を勘案し設定するものとする。
4) 水質・底質
埋立工事の実施に伴う濁りの発生状況等について、定期的な測定などの調査を行う。
(2)存在に係る事後調査
水質、底質
埋め立て地の存在に伴う水質汚濁について、周辺海域の定期的な測定などの調査を行う。
(3)その他
潮流、動物、生態系、景観、廃棄物、地球温暖化等について、関係資料の収集・整理などの調査を行う。
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◆参考
環境影響評価の受託者の氏名及び住所
(略)
その他環境影響評価等の実施に係る事項
空港島の土地造成及び土地利用計画等は平成9年3月、神戸港港湾計画に追加変更されており、今後、公有水面埋立法に基づく手続きがある。
なお、空港島に設置する神戸空港は平成9年2月、航空法に基づく設置許可を取得している。
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◆おわりに
本事業は、航空法に基づき運輸大臣の設置許可を受けた神戸空港と空港関連施設の用地確保を目的として実施するものです。
空港島埋立事業に係る環境影響評価として、本事業が、大気質、騒音、震動、潮流、水質、底質、動物、生態系、景観、廃棄物、地球温暖化の11項目の環境要素に及ぼす影響について予測、評価を行った結果、いずれの項目も環境保全目標を満足していることから、本事業が環境に及ぼす影響は軽微であり、将来の市民の健全で快適な環境は保全できると考えています。
今後、事業実施の段階で、事後調査を行い、必要に応じて適切な環境保全上の措置を講じることにより、さらに環境保全に努めてまいります。
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以下の点は環境アセスメントの参加者に配られた環境影響評価準備書の要約書に掲載されていなかった事柄です。(神戸市の説明の要約)
◆活断層
空港島予定地の地下2500m付近には活断層の存在が確認されている。
活断層は1000年に1m未満の変動しかないB級活断層である。
空港島や空港施設は耐震構造、液状化対策を施す。
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