第16号斜説〜中央市民病院移転計画を斬る!!

2000年10月2日
 神戸市は、現在ポートアイランド1期地区にある中央市民病院を「設備の老朽化」を理由に、2005年度以降、ポートアイランド2期地区(以下「ポーアイ2期」)に移転させることを明らかにしました。
 中央市民病院は、かつては新神戸駅前の市街地にありましたが、1981年のポートアイランド1期完成を期に、現在の位置に移転しました。
 しかし、あの忌まわしい阪神・淡路大震災では「離島」にあることがあだとなり、「市民病院」の機能を失いました。なぜなら大量の死傷者を出した市街地(本土)から中央市民病院へ患者を搬送するには、当時、余震で落下の危険があった神戸大橋を渡らなければならず、満足に患者の搬送すらできませんでした。
 当時、市民のあいだで「もし、新神戸駅前に中央市民病院がそのまま存在していれば、全壊した長田区の西市民病院の機能を補完できたのでは?」と悔やまれたほどです(新神戸駅周辺の震災被害は軽微だった)。

 現在の中央市民病院の立地でさえ市民の不満の声が上がっているのに、今回、市は、さらに市街地から遠いポーアイ2期へ病院を移転しようとしています。
 市の説明によると、ポートアイランド2期には「先端医療センター」「発生・再生化学総合研究センター」といった医療研究施設が立地する予定であることから、このような地域に市民病院を移転すれば「市民に高度な医療が提供できる」と言っています。

 この計画は「医療産業都市構想」と呼ばれ、あの悪名高き「神戸空港」計画と強く結びついています。
 市が発行する「神戸空港ニュース19号(1999年1月1日)」および空港推進協議会のチラシ「ひらけ未来へ神戸空港」によると「空港は血液、臓器などの緊急輸送や重症患者の救急輸送、さらには医療関連企業の立地を促す観点からも大きな力となります」と位置づけています。
 確かに空港から近いところに市民病院があれば、輸血や臓器移植を必要とする患者に遠方から迅速に血液や臓器を運ぶことができるでしょう。しかし、病院を市街地から遠ざけることで、助けるべき救急患者を搬送するのに時間がかかる…ということは市の関係者は考えたことがないのでしょうか? それとも市内の救急患者もジェット機で搬送するつもりなのでしょうか?

 神戸市は震災の教訓を何一つ学んでいないどころか「市民のための病院」を「空港のための病院」と考えているようです。

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