阪神・淡路大震災〜余震はどうなった?

1998年1月17日発表
●意外に知られていない「前震」
 地震の災害を「震災」といいますが「災害」とは別に「地震」そのものは、どうなったのかレポートします。
「兵庫県南部地震」の本震は1995年1月17日5時46分、マグニチュード7.2、震源は発表機関によってバラバラですが、公的には明石海峡付近、深さは約20kmとされています。(京都大学などのレポートでは、震源地は神戸市長田区直下となっている)
 実は、この前日の夕方18時28分に、神戸で震度1の地震が観測されていました。震源は本震とほぼ同じ、規模はM3.0でした。
 神戸でも感じない地域があったことも事実で「風見鶏」関係者で、この地震を体感した人はおらず、しかも、この「前震」の情報を知っていた人も皆無でした。  この地震による地震速報は、有感地震観測地点が神戸の1ヶ所だけとあって、ほとんどのテレビ・ラジオでは、この情報は流されませんでした。
「関西で大地震が起こらない」
 今だからいえることですが、ある意味では「無防備都市」の象徴的な出来事でした。
 結果論にはなりますが、小さな地震でも関心を持つことが防災の第一歩ではないかと感じます。つまり、今日の震度1が、明日の大地震になることもありうるわけです。

●余震は今も続く
 本震に関する情報は、あの日以降、大々的にマスコミでも取り上げられましたので、詳しくは記しませんが「余震」については、あまり知られていません。
 神戸海洋気象台の観測によると、1995年1月17日の有感地震は61回(本震も含む)で、これは1994年以前20年間の神戸で観測された有感地震回数に匹敵します。  つまり、地震回数だけで見ると過去20年分の地震が、わずか20時間で起こったことになります。
 無感地震も含めた兵庫県南部地震の余震は1995年が2360回、1996年が180回、1997年が109回でした。

 さて、気になる現時点での最大余震ですが、本震直後4分後(1995年1月17日5時50分)に起こったマグニチュード5.2、神戸震度4が最大規模です。
 最近起こった比較的大きな余震は1995年10月14日午前2時4分に起こったマグニチュード4.8の地震です。震度は神戸、明石、淡路島北部で震度4でした。この余震は北は福井市、西は鳥取県境港市でも有感地震として観測されています。

 昨年は有感余震が9回、最大の余震は、震度では1997年5月14日で、神戸市灘区で震度3を記録しました。規模では10月24日(神戸北・中央・灘で震度2)、11月5日(京都府亀岡、宝塚などで震度2)のマグニチュード3.6でした。
 特に10月24日の余震は、公式資料によると震源地は新幹線新神戸駅付近でした。


●最近の余震の傾向
 余震は確実に減っていますが、余震域近くの有感地震として目立っているのは、昨年の春から夏にかけて、姫路市近辺での小さな地震が一時的に多発した点です。
 この付近は山崎断層が走り、1984年5月30日にはマグニチュード5.6(姫路震度4、神戸震度3)の中規模な地震を引き起こしています。
 しかし、この断層は比較的大きな断層であるにも関わらず、マグニチュード7クラスの地震が歴史的に記録されておらず、地震学者の間では、兵庫県南部地震以前から「要注意」とされていました。
 一部の学者の間では、兵庫県南部地震の影響によって、山崎断層へのひずみの負担が大きくなっているのではないかと、唱える人もいます。
 もし、この断層が大きく動くとすれば、姫路市で震度6級、神戸や岡山で震度5前後を記録するのではないかと言われています。

●20xx年「南海地震」の恐怖
 活断層による内陸地震の予測は数千年から1万年の誤差があり、ほとんど予測不可能とされていますが、プレート型大地震は数百年の周期があり、比較的(あくまでも「比較的」)予測しやすくなっています。
 関西で被害を出しそうなプレート型地震は「南海地震」とされています。
 「南海地震」は1707年(マグニチュード8.4)、1854年(同8.4)、1946年(同8.0)と、ほぼ100〜150年周期で、しかもマグニチュード8クラスです。
 地震規模からして、兵庫県南部地震の約30倍の規模です。
 これまでの南海地震の記録を見ると、関西では、ゆっくりした横揺れが1分以上続いたとされています。(兵庫県南部地震では強い縦揺れが約20秒)
 揺れそのものも強力ですが、問題は津波被害で、海沿いで多大な被害を出しています。四国などでは津波が、小高い丘の中腹にまで達したといわれています。
 特に神戸、阪神間の被災地では復興対策として地震対策ばかりが声高に進められていますが、100年以内のスパンで考えると「震度7」が再度おそう確率よりも南海地震による津波災害が起こる可能性が高いのは歴史的に明白で、防潮堤、津波避難所対策が防災対策上、必要だと考えられます。
(「津波」の観点から考えると海上空港である神戸空港はまさに防災対策に逆行しています)
 また阪神間では0メートル地帯が多く、そこに埋め立て地、工業地帯が高度に発展しているため、前回の南海地震津波では考えられない被害も予想されます。
(たとえば工業原料である石油などの引火性物質が流出し、津波に乗って海沿いの住宅地を襲撃するなど)
 「津波」は英語でも「tsunami」と表記します。津波は今や世界各国で通用する日本語の1つにもなっているのです。日本は「地震国」であると同時に「津波国」でもあるわけです。
 いずれにせよ、地震災害に対する心構えに油断は許されません。
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