第9号斜説〜空港推進派の人も「住民投票」の推進を

1998年8月21日
賢い神戸市民は必ず「住民投票条例制定署名」に署名しよう!!
 『風見鶏』の今年のスペシャル企画は「神戸空港を考える」。どちらかといえば反対の立場の論調を取ってきた。
 おそらく、空港推進派の人で『風見鶏』をチェックされている人はいないかも知れないが、今回の斜説は空港推進派の皆様にお読みいただきたい。
 8月21日より、神戸市内で住民投票条例の直接請求署名が活発に集められている。
 この署名は法律に基づくもので、神戸市の有権者人口を考えると1か月で約2万3千人の神戸市民が署名すれば、住民提案の条例が市議会に提出できるというものである。
 現在、空港反対派が主流で「住民投票制定署名」が進められているが実は推進派にも住民投票はメリットがあるのだ。

正しい「空港推進派」は必ず「住民投票条例制定署名」に署名しよう!!
 分裂した市会自民党を中心に、この住民投票条例の直接請求の阻止を目指した「住民投票条例制定に反対する署名」を集めるという、とんちんかんな計画をしているが、「住民投票条例」そのものには推進派も反対派もないはずである。
 このほどまとめられた条例案によると投票は「神戸空港計画に賛成ですか、反対ですか」の二者択一式で行われる。
 推進派なら「賛成」に○をつければいいだけのことで「住民投票条例制定に反対する署名」はナンセンスであり、市会与党議員の頭の悪さを改めて示す行為であり、このようなアホ議員を選んだ神戸市民の政治意識の低さを全国にアピールするようなものである。
 市会与党が「住民投票」に消極的なのは、神戸空港計画の恥部を住民投票によって知られたくないからだと勘ぐられても仕方がないだろう。
 本当に神戸空港計画が市民に対して自信を持って推し進められるというならば「住民投票条例制定に反対する署名」のようなアホな抵抗はやめて、住民投票条例を成立させた後に、賛成票の運動を進めた方が、賢明の選択といえるし、それでこそ成熟した民主主義ではないだろうか。

「住民投票条例案」の今後の行方
 法定期限である9月20日で署名が締め切られ、法定の署名数が集まれば11月の市議会で「住民投票条例案」が審議される。
 神戸市議会議員が与野党関係なく「民主主義」をわきまえていれば成立し、早くとも来年2月に住民投票が実施される運びとなる。
 もし、法定数の署名を集めたにもかかわらず、神戸市議会で条例案が否決されることになると、神戸市は「日本一レベルが低い大都市」と全国からの笑い者になる。
 なお、神戸市で住民投票が行われると、有権者人口で、96年9月の沖縄県が実施した住民投票(日米地位協定見直しなど)を上回り、全国最大規模の住民投票となる。
 さらに、政令都市としても初めてのことになり、都市運営の見本といわれながらも震災で破綻した神戸市が、今度は民主主義が高度に進んだモデル都市として全国の注目されることになるだろう。


▼資料・最近の住民投票▼
投票日実施自治体人口争点投票結果住民投票後の自治体の対応
96年8月4日新潟県巻町3万原子力発電所の建設賛成 39%
反対 61%
建設予定地の町有地売却を中止
96年9月8日沖縄県127万日米地位協定の見直し賛成 91%
反対 9%
県知事が日米両政府に見直しを要請
97年6月22日岐阜県御嵩町2万産業廃棄物処理施設の建設賛成 19%
反対 81%
建設予定地の町有地売却を中止
97年11月16日宮崎県小林市4万産業廃棄物処理施設の建設賛成 41%
反対 59%
住民投票結果に反し、県は「建設用地が私有地」との理由で、建設を許可
97年12月21日沖縄県名護市5万米軍海上基地受け入れ賛成 46%
反対 54%
住民投票結果に反し、市長が受け入れ表明後に辞任
98年2月8日岡山県吉永町5千産業廃棄物処理施設の建設賛成 2%
反対 98%
県が設置許可申請を不許可
98年6月14日宮城県白石市4万産業廃棄物処理施設の建設賛成 4%
反対 96%
県はもともと設置許可申請を拒否
98年8月30日千葉県海上町1万産業廃棄物処理施設の建設賛成 2%
反対 98%
 
予定では…
99年2月?
兵庫県神戸市143万空港の建設賛成 ?%
反対 ?%

斜説余録〜住民投票は「議会制民主主義」を否定しているのか?

1998年1月1日
 推進派の人たちは住民投票の動きに対して「議会制民主主義」で決まったことなので住民投票を行うのはおかしいと口を揃えて言う。果たしてそうなのだろうか。
 というのも、市会議員選挙が行われたのは阪神・淡路大震災から約5か月後のことだった。まだ震災の傷跡が街に露出していた中、すべての候補者は「震災復興」を公約にかかげた。
 特に空港推進派で「神戸空港建設」を声高に叫ぶ候補者はいなかったのである。議会制民主主義の否定を標榜する前に、空港推進派議員は市民、震災被災者をだましたようなものなのだ。
 震災で役に立たなかった市会議員を選ぶことよりも、自分たちの生活復興のほうが大事だった時期に選挙が行われたため、市議選の投票率は史上最低となった。
 神戸市は住民投票直接請求手続き開始に際して「市民代表で構成される市会の議決を踏まえて手続きを進めている」との声明を出しているが「どこに市民の代表がいるのだろう」と思わずにはいられない。
 市会の最大会派は宗教政党であるし、それ以外の議員は商工会議所や大手製鉄会社の代表である。純粋に「市民代表」は一握りしかいない。

 1997年秋の神戸市長選挙では現職市長が当選したものの、対立候補に5万票差まで迫られての当選である。東灘区、灘区では対立候補の得票のほうが多かった。3年前の市会選挙の情勢と今の情勢は大きく変わっていることに、推進派議員は気がつかないのだろうか。
 気がついているからこそ、住民投票を恐れているという考え方もある。

 今年8月、空港を作りたくて仕方がない神戸市の主催で行われた「環境アセスメント公聴会」では公述人33人中、22人が空港に反対の立場で意見を述べた。
 公述人の選定については、中央区民であるという条件をのぞけば、届け出た全員が公述人に選出されている。空港反対派だからといって公述人を断られた人はいない。
 この結果から考えて、少なくとも空港が建設される中央区の住民の7割近くの人は、空港に反対しているといっても過言ではないだろう。逆に空港推進派は単純に見積もっても3割程度しかいないのである。

 3年前の選挙で得た議席を「市民代表で構成される市会」と言い切るのであれば、市会議員は全会一致で住民投票条例を可決するべきである。
 住民投票の中で、神戸空港の推進、反対を決めるのが、推進派議員にとっても賢明な選択といえる。

風見鶏 >> バックナンバー >> 第9号斜説