第3号斜説〜おかしな国のおかしな街の神戸空港のお話〜後編 |
1997年8月20日 |
前回は3100億円の札束を埋め立てて建設されようとしている神戸空港について触れてきたが、いよいよ、この斜説の本論である、さらに上積みされる3000億円の使い道について解説したい。 その前に、くどいようだが、この3000億円は神戸空港による公害の対策費用である。つまり、この3000億円は神戸空港さえ造らなければ不要であるということを、皆様の頭の片隅に置いていただきたい。 特に神戸市民は10月26日の神戸市長選挙の判断材料にもなると思うので、記憶にも留めて置いてほしい。 とりあえず3000億円の内訳を示しておきたい。 このうち1000億円は、2010年までに完成を目指す下水道処理施設の整備費用である。一見、空港とは関係なさそうだが、これが大いに空港と関係あるのである。 神戸空港は海上に建設される。そのことで大阪湾の海流が変わり、瀬戸内海の海洋汚染が広がることは環境庁自身が認めていることなのだ。 現行の下水処理施設から海に放流される高度処理水でも、海洋汚染は、それほどの影響はなかったのだが、神戸空港が出来ることにより、海流が変わるため処理水とはいえ、海洋汚染の原因になると考えているらしい。 下水道施設の整備を震災復興事業とするのならまだしも、神戸空港を造ることを条件に下水施設を整備するとりきめが、神戸市と環境庁で取り交わされていたのだ。 つまり「国費で下水施設を整備して上げるから、市民の反対に屈せず、神戸市長は空港計画を推進しなさい」と言っているようなものなのだ。それに1000億円が投じられる。 環境庁は、この整備で瀬戸内海の海洋汚濁の原因となる窒素が現行の30%、リンを10%削減できると言っているが、空港を造らずに、復興事業の一環として下水道施設の整備をしたなら、その数値は更に改善され、空港建設費用の3100億円も不要になったはずである。 数字のトリックに目をくらまされていると、貴重な「税金問題」に頭が回らなくなるので彼らの言動に惑わされないようにしたい。 下水施設整備だけなら、神戸空港に関わる総事業費6100億円のうち、わずか1000億円で事が足りるのである。 次に、訳が分からないのは環境を守ることを目的としている「環境庁」が人工海浜などを備えた公園を造ろうとしていることだ。 一見、いいことのように思えるが、これは、神戸空港が出来ることにより海辺の環境も悪化することをごまかすために整備されるものである。 具体的には、魚やカニが棲息できる人工浜や、神戸港に全長12キロメートルにも及ぶ木製の遊歩道を整備するらしい。いつから環境庁は観光施設を造るセクションになったのだろう。 空港が出来た後、海辺に整備された公園を市民や観光客に利用させることで「神戸空港による公害はありません」と思いこませるために造られるものといっても過言ではない。 前回斜説をお読みになられた方なら、わかると思うが、このような大規模な建設工事を行うと当然利権が動く。3000億円、いや神戸空港とセットで6100億円の利権の一部は「静香ちゃん的」な大臣や政治家の懐にも入る。もしかすると神戸市長にも、おこぼれが「選挙資金」という形で転がり込むかもしれない。
そして、10月26日、神戸市長選挙の投票が行われる。 |
関連記事〜21世紀…「阪神・淡路大公害」の恐怖 |
1997年6月15日 |
「24時間空港」の鳴り物入りで開港した「関西国際空港」…すでに離発着機が満杯状態で、建設、開港の条件として周辺自治体に提示されていた「離発着機は陸上を(低空で)飛行しない」の約束も、運輸省によって破られようとしている。 当初の約束と違うことに怒りを表明している大阪府、兵庫県などの周辺自治体は陸上飛行ルートに対する環境への影響などを正す質問書を運輸省に提出していた。 そして9月12日、運輸省より、その回答が示され、公表された。 特に兵庫県に対する回答では、大阪湾上空の空域混雑を避けるため、関西空港離発着機が、淡路島上空を低空で飛行することは「空域混雑を避けるため」に必要な措置だとしている。 また、神戸空港が開港すると、最高、1日約90機が神戸市垂水区から淡路島北部上空を通過することが回答で指摘された。これに伴う騒音は「基準値以下」としているが、こればかりは、数値だけでは予想はできない。 現在、すでに稼働している関西空港だけで、大阪湾上空の空域が「過密状態」と運輸省は認めているのに、なぜ、わざわざ、その大阪湾を埋め立てて神戸空港を作る必要があるのだろうか。 このまま、神戸空港が予定通り建設されると、2004年以降、次なる大災害「阪神・淡路大公害」が、復興した街を襲う・・・と運輸省は机上の計算ながら暗に指摘したようなものである。 |
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