第14号斜説〜飛び立つ神戸空港〜環境庁意見の読み方

1999年7月1日
 とうとう、市営神戸空港は民意を問われないまま、国家のお墨付きを受けてフライトすることとなった。
 この現実を前に私たち市民はどのように神戸空港と付き合うべきなのだろうか。空港建設を決定的とした「環境庁意見」から考えてみたい。
 よく県知事や神戸商工会議所会頭は、全国的な広がりを見せる神戸空港反対運動に対し「神戸市民でない方が神戸の問題に口を挟むな」という主旨の発言を頻繁にしているが、環境庁意見はいきなり、この書き出しで始まる。
「厳に埋め立てを抑制すべきとされている瀬戸内海海域で実施される計画であるが、阪神淡路大震災の復興事業の核として位置づけられるものであること等を考慮」
 神戸空港埋め立て予定地は「公有水面」である。したがって神戸市だけのものではない。しかも「埋め立てを抑制すべき瀬戸内海」とあることから、大阪湾だけではなく瀬戸内海全域の問題なのだ。
 なおかつ、「神戸市」の震災復興のためなら「神戸市民以外」が迷惑を被るのはやむを得ないと環境庁は明言しているようなもの。これは知事や神商議会頭のご立派なご意見と矛盾しないだろうか?(もちろん神戸市民はそこまで図々しくない)
 これだけの大規模プロジェクトに対し、神戸市が行った環境アセスメントは、神戸市だけ、しかも「影響地域は中央区に限られる」として、中央区内でしか説明会公聴会を行わなかった。これは明らかにおかしい。
 したがって、環境庁はアセスメントの実態を本当に審査したのか疑わしい。「意見」の冒頭で「埋め立てを抑制すべきとされている瀬戸内海海域で実施」というのであれば、市に対して、もっと広域で環境アセスメントを行えと助言すべきだろう。
 だが、意見には、アセスメントのやり直すべき条件も記されている。「今後、環境影響評価の前提となった飛行経路、便数等に変更があり、陸域において環境基準の達成が困難になるおそれがある場合」に再評価を行う必要があるとしている。
 そして、最後に「背後市街地への環境影響を考慮しつつ適宜調査地点および回数を追加するとともに、監視結果を適切に公表すること」が条件に盛り込まれている。
 この部分は、あたかも空港事業者の「市」に対して環境庁は言っているように見えるが、実際は、市民に対し「神戸空港の問題は、これで終わった」のではなく、ますます厳しい監視の目を持たなければならないと暗に言っているのだ。市が再評価をしても市民が関心を持たなければ、航空機騒音、大気汚染などがひどくなっても再評価の意味はない。市民が空港を不快と思ったときには、もう遅いのである。今後も積極的に市の空港行政を見つめ、市民の立場として市の不正は見逃してはならないのである。
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