酒鬼薔薇聖斗事件「風見鶏」の総括

最終更新:1997年7月26日
▼「風見鶏」始動▼
 「風見鶏」では5月31日より「神戸須磨猟奇殺人事件点と線」(7月16日より「酒鬼薔薇聖斗事件・点と線」に変更)と名付けたページを「速報版」として立ち上げました。当時はまだ創刊号の更新版としての発表でした。
 本誌では、事件を取り上げるに当たり、マスコミ報道の嘘と現地で行われている非常識な取材活動を中心に告発してきました。この観点は阪神・淡路大震災の際に「震災版風見鶏」「レターニューズ風見鶏元気新聞」でも行ってきた、ある意味では本誌の伝統的な報道スタンスと言ってもいいでしょう。
 6月7日からは神戸に本拠をおく本誌としては、編集部の持てるネットワークを駆使して独自の事件取材を行い「自分たちなりの良識」をも持ってこの事件に接してきました。
 しかし6月28日の酒鬼薔薇聖斗の逮捕は、私たちの、これまでの取り組みを完全に否定するほどの衝撃的な出来事でした。

▼逮捕前夜から逮捕翌日にかけて▼
 事件が白日に下にさらされて1か月目にもあたる6月27日。現地から「事件は長期化する」という情報が流れ、また兵庫区在住でビデオジャーナリストの神田敏晶さんの呼びかけでインターネットによる「酒鬼薔薇聖斗へ自首を勧めるメッセージ」に応え、「風見鶏」でも自首メッセージをネット上で公開、同時に読者の皆様へもメッセージを寄せていただくように呼びかけました。
 翌日午前中までに数名の読者の方からメッセージを寄せていただき、夕方、そのメッセージを早速公開するべくHTMLの編集をしていたところ、ニュースで「酒鬼薔薇聖斗逮捕」の速報が飛び込んできました。
 一旦、作業を中断し、県警記者会見のテレビに注目。テレビで得た会見中継の要約を22時にインターネット上で速報。正確な数字はわかりませんが、かなりの方が「風見鶏」へアクセスされたようです。
 同時に自首メッセージを寄せていただいた皆様へ掲載の中止と酒鬼薔薇聖斗逮捕の速報を電子メールで伝えました。
 6月29日、約1か月に渡ってこの事件を伝えてきた行きがかり上、今後の事件の取り扱いで簡単な編集会議を行いました。ここで持ち上がった企画が「電子陪審」でした。

▼「電子陪審」の企画意図と反響▼
 この企画をネット上で発表するに当たって、容疑者が14歳であること。少年法では刑罰に問われないことを特に浮き彫りにする必要があるという観点から、この企画が生まれました。
 実は6月13日に一新した「風見鶏」第2号では、ペーパーメディア時代から企画を進めていた「関西じゃりン子チエ研究会」の新連載をスタート。すでに、この企画で少年法と鑑別所の関係について下調べをしていたこともあり、酒鬼薔薇聖斗逮捕時点で「風見鶏」メンバーの間では、それなりの少年法の知識を持ち合わせていました。
「逮捕された少年が犯人だとした場合、一般の人々はどのような刑罰が妥当と考えているのか」を知るために、29日昼には「風見鶏編集部の見解」「電子陪審募集」の告知を行いました。
 その直後、編集関係者の間から「電子陪審はワイドショー的な企画ではないか」という声が挙がったのも事実です。私たちが憎む厚顔無恥な精神学者のしているようなことを一般の方々に押しつけようとしていたのですから、相当な批判も覚悟をしていました。
 ところが、今日までに直接頂いた批判は2通。そのうち1通は「裁判」と「陪審」の意味を根本的に勘違いしているため直接的な批判とはなっていませんでした。もう1通は、電子陪審の形で私たちに対する評決です。
 直接的な批判こそはなかったものの、愛読者カードを返していただいた方の中には、陪審欄を未記入のまま返送された方もいましたので、この企画にかなりの不快感を示された読者がいたことも、私たちは認めなければならないでしょう。
 これらとは別に、こちらへ直接、批判を言わずに、「悪趣味なページがある」と風見鶏のアドレスを仲間内の電子メールで回してくれた「悪趣味な輩」がいたことも付け加えておきます。
 さて、個々の評決に主宰者が主観を交えるのは、よくないことですが「風見鶏」では6月13日より、単なるマスコミ批判ではなく「マスコミの情報を信じるな」という主旨で「点と線」を発表して来ました。
 特に独自取材と読者間のネットワークの連携によって、インターネットの「酒鬼薔薇」文字目撃証言の誤報犯行声明神戸西郵便局消印説の誤報は、マスコミが肯定報道をしている最中に発表し、読者の方々から多大な評価を受けました。
 つまり「風見鶏」は独自取材を発表することによって、マスコミの読者や視聴者に対してマスコミの情報を鵜呑みにしてはいけないということを伝えてきたのです。
 その主旨がすべての読者に伝わらなかったことは、読者がそれぞれの視点で私たちの発表を見ていただいたものとして受け取り、非難をするつもりはありませんし、それこそ、究極的には、私たちの主旨とも合致した見方をしていただいたものだと感じています。
 なお、マスコミ報道の構図については7月4日発表の緊急斜説に、詳しく書いてありますので、そちらを参考にしてください。

 「電子陪審」そのものについてですが、15件が寄せられ、容疑者に対するものよりもマスコミ関係に多くの評決が寄せられました。中には識者のコメントが間違っていることをご自分で調べて、お寄せいただいた方もいました。それこそ「風見鶏」が皆さんに伝えたかったことなのです。
 どうしても感情論に走りがちですが、入手した情報をまずは自分なりの視点で疑ってかかれば、被害者や加害者の人権云々以前に、この事件に対するマスコミ報道がおかしかったことは、自ずとわかると思います。もちろん、少年法論議も同様です。法の知識がなくても、いろいろな見方はありますが、少年法の考え方に疑問がわいてくると思います。
 ピーク時には1日200件前後のアクセス数があった割には「陪審員」の数は少なかったですが、私たちなりには貴重な意見が得られたと感じています。

▼これから▼
 1997年7月25日。
 酒鬼薔薇聖斗は少年法と神戸弁護士会に守られ、再び私たちの前から姿を消しました。
 私たちはこれまでと同様の取材活動は困難になります。しかし、審判過程で漏れてくる情報については、今後も「風見鶏」で速報していきますので、これからも「風見鶏」をご愛読いただきますよう、お願い申しあげます。

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